技術情報

POM(ジュラコン®) の切削加工においての設計上のポイント

POM(ジュラコン®)は、機械・装置・設備メーカーの設計・開発担当者にとって非常に扱いやすい樹脂材料です。

本記事では、POMの特徴や切削加工の際に押さえておくべき設計ポイントを解説し、加工コストの最適化や品質向上につながる情報をお伝えします。

POM(ジュラコン®)とは?

POMは、優れた機械的強度、耐摩耗性、寸法安定性を兼ね備えたエンジニアリングプラスチックで、摺動部品や精密機械部品に広く使われています。熱や薬品にも比較的強く、加工性にも優れているため、多くの産業分野で重宝されている素材です。

POM(ジュラコン®)の切削加工においての設計上のポイント

ポイント①:無理な公差設定は避ける

POMは切削加工時に発生する熱の影響で、わずかな熱膨張や変形が生じやすい樹脂です。そのため、加工中に寸法が変化しやすく、極端に厳しい公差を設定すると、寸法を安定させるために加工工程が複雑になり、結果として加工時間やコストが増加する可能性があります。

ポイント②:適切な表面粗度を設定する

表面粗度の設定が厳しすぎると(例えばRa0.8以下)、加工時間や工数、工具コストが増加します。一般的にPOMはRa3.2~6.3程度の表面粗度なら通常の切削加工で十分ですが、それ以上となると研磨加工などが必要となります。部品の用途や機能に応じて適切な面粗度を設定することがコストバランスを考える上で重要です。

ポイント③:薄い壁や細いリブのような形状は可能な限り避ける

薄い壁や細いリブのような形状は切削加工時、切削抵抗によるたわみや振動(ビビリ)を起こしやすく、精度不良や表面荒れの原因となります。特に構造的に弱い部分は加工中に振動が発生しやすく、仕上がり精度が低下します。そのため、必要に応じて、設計段階で厚みや形状の見直しを検討する必要があります。

当社のPOM(ジュラコン®)加工における特徴

特徴①:長年にわたりPOMの切削加工に携わってきたことで培われた豊富な経験とノウハウ

長年にわたりPOMの切削加工を行っており、年間数千点の加工実績があります。熱変形やバリ発生などの課題に対し、最適な切削条件や工具選定、冷却・クランプ方法を熟知しているため、高精度で安定した品質の製品を短納期でご提供可能です。

特徴②:培った深い知識に基づいたVE提案

当社では、知識・ノウハウを活かしたVE提案も積極的に行っています。例えば、

「この形状は加工時に変形しやすいので修正を」

「金属製の部品を機械特性と耐摩耗性に優れたPOMに置き換える代替提案」など、

具体的なアドバイスを通じて製品開発の課題解決に貢献いたします。

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特徴③:多品種少量から量産まで対応可能な生産体制

多品種少量生産から量産まで対応可能です。特定の部品に特化するのではなく、幅広い種類のPOM部品を手掛けており、多様なニーズに対応しています。を最優先するか」です。性能とコストのバランスを考慮し、代替素材選びを行うことが不可欠です。

当社のPOM(ジュラコン®)の加工事例

POMの加工事例の一部をご紹介いたします。

事例①:食品製造ラインキャップ治具

本事例は、食品製造ライン用のキャップ治具です。視認性を高めるため赤色のPOM素材を採用しました。色付きPOMは識別やポカミス防止に効果があり、食品や産業分野で多く活用されています。赤のほかに緑・黄・青なども選べます。

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事例②:半導体製造装置用吸着プレート

本製品は、半導体製造装置用吸着プレートです。寸法安定性に優れ、長期使用でも形状変化が少ないことからPOMが本製品に採用されました。

サイズが大きく厚みが薄いため、反りが発生しやすい構造ですが、ウエハー吸着用途であるため高い平面精度が求められます。そこで、加工工程を分割するなど、反りを抑えるためのノウハウを活かして製作しております。

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POM(ジュラコン®)の切削加工におけるよくある質問

Q1: POMで高精度部品を設計する際、加工上のどのような制約がありますか?

POMで高精度部品を設計する際の主な制約は、「切削熱による寸法変化」と「熱膨張率の大きさ」です。POMは金属に比べて熱伝導率が低く、加工中に発生する熱がワークにこもりやすいため、一時的な膨張や、加工後の冷却による収縮が寸法誤差につながります。また、使用環境の温度変化による寸法変動にも注意が必要です。

Q2: 薄肉部や細いリブのような形状を設計したいが切削加工で再現は可能ですか?

条件次第ではありますが、切削加工による再現は可能です。

ただし、薄肉部や細いリブ形状は「変形」や「ビビリ」が発生しやすく、寸法精度や表面粗さに悪影響を及ぼす可能性があります。

設計上は、肉厚をできるだけ均一に保ち、急激な厚みの変化や極端に薄いテーパ形状は避けることが、精度再現性を高めるポイントです。

Q3: 角Rが小さい箇所や鋭利なエッジを設計すると、加工上の問題が生じますか?

角Rが小さい箇所や鋭利なエッジは、切削加工において「バリの発生」「エッジの欠け」「工具の破損」などのリスクが高くなります。特に鋭角部はバリが発生しやすく、バリ取りの追加工程が発生すれば、その分コストや工数が増加します。

外観や機能に影響がない場合は、あらかじめC面取りやR面取りを設計に取り入れることで、バリの抑制や加工安定性の向上につながります。また、工具側も無理な小径Rを求めると折損リスクが上がるため、無理のない設計が必要です。

Q4: ねじ穴や勘合部を設計する際、POMの特性を踏まえてどのような点に注意すべきですか?

ねじ穴や勘合部は、製品の組み立て性や機能性に直結するため、特に注意が必要です。

POMは比較的良好なねじ保持力を持っていますが、過度な締め付けはネジ山の潰れや破損を引き起こす恐れがあります。

設計時には、ネジ外径の1.5~2倍程度の肉厚を確保するのが目安です。繰り返しの着脱を伴う用途では、金属製のインサートコイル(ヘリサートなど)の使用も有効です。

また、POMの熱膨張特性を踏まえ、使用温度範囲に応じて勘合部のクリアランスを適切に設計することが重要です。特に圧入構造は、長期間使用すると緩みが生じやすいため、用途によっては不向きな場合があります。

Q5: 表面粗度について、どの程度のRa値を目標にすれば、コストと品質のバランスが取れますか?

POMは切削加工で比較的良好な表面仕上げが得られる材料ですが、表面粗度の設定が厳しすぎると加工コストが大きく増加します。

例えば、Ra1.6以下を目指す場合、加工時間の増加や工具の摩耗管理が必要となり、場合によっては研磨などの後加工も検討が必要になります。コストと品質のバランスを考えると、一般的な切削加工で対応可能なRa3.2〜Ra6.3程度が現実的です。

また、表面粗度の指定にあたっては、理由(例:摺動性確保、外観品質など)をお伝えいただくことで、より適切な加工方法を選定することが可能です。

POM(ジュラコン®)の切削加工は、F・S・エンジニアリングにお任せください!

POMは非常に優れた素材である一方、加工には高い技術が求められます。特に設計段階での配慮が、品質とコストの両立を実現するための重要な要素です。

当社では、POMの特性と加工ノウハウを熟知したプロフェッショナルが、図面段階からのご相談にも対応いたします。POMの切削加工でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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