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樹脂切削加工品の材料変更によるコストダウンおよび品薄対策

樹脂の切削加工部品を扱う皆様にとって、材料選定は製品の性能やコストに直結する重要な要素です。特に近年、材料供給の不安定さやコスト上昇が課題となる中、適切な材料選定によるコストダウンや品薄対策が求められています。

そこで本記事では、樹脂切削加工品において、材料提案によるコストダウンおよび品薄対策について解説いたします。

最適な材料選定によるコストダウンおよび品薄対策

品薄状態による材料変更

一部の樹脂材料は、製造コストや原材料供給の不安定さ、需要の低さから生産しなくなっている傾向があります。例えば、導電性POM(セミトロンEsb)はその一例です。具体的な代替材料として、AE素材(POM13-AE3)などが考えられます。

コストダウンを目的とした材料変更

コストダウンを目的とした材料変更の例として、導電性ユニレート(ユニレートCV)から導電性MCナイロンCDR2(ユニレートCVの70%前後)、CDR6(ユニレートCVの50%前後)への変更が考えられます。これにより、材料費の削減が可能となります。

ただし、導電性MCナイロンCDR2とCDR6は、導電性ユニレートと比較して、寸法安定性・耐熱性が劣るため、コストと性能のバランスを考えた選定が重要です。

機能性向上を目的とした材料変更

機能性向上を目的とした材料変更の一般例として、POMから超高分子ポリエチレン(摺動性、耐摩耗強化)、透明塩ビからPC(衝撃性への強化)、POMからPEEK(耐熱性強化)への変更が考えられます。これにより、製品の性能向上が期待できます。

図面精度を担保するための材料変更

材料変更によって、図面精度を担保することも可能です。例えば、MCナイロンからPEEKへの変更が考えられます。MCナイロンは吸水性があり、厚みの部分で寸法変動が生じる可能性がありますが、PEEKは吸水性が低く、寸法安定性に優れています。これにより、図面精度を担保することが可能となります。

当社の材料変更による課題解決事例

事例①:PEEKへの材料変更による不良品の抑制

こちらは電子部品用のプレートで、元々、MCナイロンで加工を行っていましたが、MCナイロンは吸水性が高いため、厚み公差(±0.02)が安定せず、湿度や温度の変化によって寸法公差から外れてしまうという問題が多発しておりました。

その結果、検査工程でのNG品が増加し、歩留まりの低下とコスト増につながっていました。

そこで当社は吸水性の低いPEEKへの材料変更を提案しました。PEEKは環境変化による寸法変動が小さく、高精度加工に適しています。この特性を活かして厚み寸法の安定化を実現し、不良品を大幅に削減。結果として、歩留まりと生産効率の向上につながりました。

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事例②:AE素材への材料変更による導電性樹脂の品薄対策

真空吸着式ピックアップ用ノズルでは、従来「セミトロンESd」という導電性樹脂を使用していました。この素材は安定した帯電防止性能と加工性を持ち、精密部品製作に最適でしたが、近年はメーカーの生産量減少により供給が不安定となっていました。

そこで当社は、代替素材として東レ製「AE素材(導電性POM)」を提案。AE素材は導電性を持ちながら高い機械強度・寸法安定性・加工性を備え、静電気対策にも優れた材料です。画像は左のクリーム色部品が「セミトロンESd」、右の黒色部品が「AE材(POMベース)」です。色味は異なるものの、性能・加工性・供給安定性のいずれにおいても代替が可能であり、今後の安定供給と継続生産を実現できました。

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切削・プラスチックの切削加工は、F・S・エンジニアリングにお任せください!

樹脂切削加工における材料選定は、製品の性能やコストに大きな影響を与えます。材料供給の不安定やコスト上昇が課題となる中、適切な材料提案によるコストダウンや品薄対策が求められています。

今回ご紹介したように、材料変更によるコストダウンや機能性向上、図面精度の担保など、様々なアプローチが可能です。

当社では、各種樹脂・プラスチックの特性と加工ノウハウを熟知したプロフェッショナルが、図面段階からのご相談にも対応いたします。樹脂の切削加工でお困りの際は、ぜひ当社にご相談ください。

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