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アクリルの切削加工を依頼する前に知っておいていただきたい設計時のポイント

アクリル(PMMA)は樹脂の中でも最も透明度の高い汎用プラスチックです。自動車、建築、医療、家電、インテリア、光学機器、看板、水族館の水槽など、幅広い業界で使用されていますが、アクリルの切削加工品を依頼する際には、押さえておくべきポイントがいくつかございます。

そこで本記事では、アクリルの基本特性から、切削加工を依頼する前に押さえておくべき設計上のポイントまでを詳しく解説します。

そもそもアクリルとは?

アクリル(正式名称:PMMA、ポリメチルメタクリレート)は、透明性が高く光学特性に優れた樹脂です。ガラスと比較して約半分の重量でありながら、高い耐衝撃性を持つため、軽量化が求められる部品に最適です。さらに、耐候性や耐薬品性も備えており、屋外使用や装置内の化学薬品環境でも安定した性能を発揮します。加工性が良いことも特徴で、精密な穴あけや溝加工、複雑形状の切削加工にも対応可能です。ただし、熱や応力による変形や白濁が発生しやすいため、加工条件や設計段階での配慮が重要となります。

アクリルの切削加工を依頼する前に知っておいていただきたい設計時のポイント

ポイント①:均一な肉厚設計や、応力集中を避ける形状設計を行う

アクリルは厚みや肉厚の変化によって、加工時や使用中に反りや割れが生じやすくなります。均一な肉厚設計や、応力集中を避ける形状設計を行うことが重要です。

また、アクリルは軽量で強度がありますが、金属と比べると衝撃や応力に弱いため、荷重がかかる箇所や取り付け方法を考慮した設計が必要です。必要に応じて補強リブや支持構造を追加することで耐久性を向上させられます。

ポイント②:バフ研磨やヘアライン仕上げなどを行う

切削加工後に工具痕や白濁が残ることがあります。透明部品では光学特性を損なわないために、バフ研磨やヘアライン仕上げなどの表面処理を設計段階で検討することが望ましいです。

ポイント③:使用用途に応じて、色や透明度を選定する

アクリルは着色や透明度の選択が可能です。使用用途に応じて、光の透過や視認性、意匠性を損なわない形状設計や切削方向の検討を行うことで、より品質の高い製品製作を行うことができます。

当社のアクリルの切削加工事例

事例①:プローブホルダ―

本事例は、電子機器のプローブホルダーです。φ0.8mmという極細穴と高度な同芯度、そして透明性が要求されました。切削加工では、切粉排出が課題でしたが、エアー・ミストオイル併用でこれを解決し、高精度と透明性を両立しています。

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事例②:測定ステージ(治具)

本事例は、測定ステージ(治具)です。アクリル製でコーナーに欠けが生じやすいですが、形状の切り上がり部の加工条件を調整することで欠けを防止しています。また、テーパー部分は治具レス加工を行い、高精度とコスト効率を両立させています。

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事例③:試験装置のチャンバー用部品

アクリル製の本部品は、試験装置用チャンバーに使用されています。透明性に優れ、耐衝撃・耐候性も高いため、屋外や低温環境下での使用に適しています。気圧にも強く、内部観察が必要な真空試験にも最適です。

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アクリルの切削加工におけるよくある質問

Q1. なぜアクリルは「透明度が高い」と言われるのですか?

アクリル(PMMA)は光の透過率が約93%で、ガラスを上回る高い透明性を持っています。素材内部の分子構造が規則正しいため光を効率的に通し、紫外線による劣化も少ないことが特徴です。

Q2. アクリル板の種類は?用途によって使い分けるポイントは? 

主に「押出板」と「キャスト板」の2種類があります。

押出板: 安価で大量生産向きですが、内部応力が残りやすく、切削加工時にクラックが発生しやすいです。

キャスト板: 内部応力が少なく切削加工に適しています。コストは高めですが、高品質な仕上がりが可能です。

高精度や複雑形状の場合はキャスト板の選定を推奨します。

Q3. アクリル加工でクラック(ひび割れ)が発生しやすいのはなぜ?

アクリルは熱に弱く、切削時の熱で溶けやすい性質があります。溶けた部分が冷える際に内部応力が発生し、クラックや欠けの原因になります。押出板は内部応力が残っているため、さらに発生しやすいです。

Q4. アクリルを綺麗に仕上げるためのポイントは?

下記のようなポイントが挙げられます。

切削条件の最適化: 低速・高送りで加工し、発熱を抑えます。

専用工具の使用: アクリル専用のダイヤモンド工具で切れ味を高め、溶けやクラックを防ぎます。

仕上げ加工: 研磨・バフがけ・化学研磨で透明度を回復させます。

Q5. 表面を曇らせずに加工できますか?

可能です。切削加工だけでは工具跡で曇る場合がありますが、研磨やバフがけで透明度を回復させることができます。

Q6. アクリルに文字やロゴを彫刻できますか?

可能です。レーザー彫刻や切削による彫刻に適しており、透明板では白くフロスト状になり光の当たり方で表情が変わる効果が得られます。

アクリルの切削加工は、F・S・エンジニアリングにお任せください!

当社では、アクリルの特性と加工ノウハウを熟知したプロフェッショナルが、図面段階からのご相談にも対応いたします。「アクリルの切削加工を依頼したいがどこに依頼すればよいか分からない」といった方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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