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設計担当者必見!ポリプロピレン(PP)の切削加工を依頼する前に知っておいていただきたい設計時のポイント

PP(ポリプロピレン)は、軽量でコストパフォーマンスに優れ、幅広く使用される代表的な樹脂材料ですが、その特性を理解し、その特性に合わせた設計・加工をしなければ、寸法変化や変形、強度不足といったトラブルに繋がることがあります。

そこで本記事では、設計担当者の方に知っていただきたい、PPの切削加工を依頼する前に押さえておきたい設計時のポイントについて詳しく解説します。

ポリプロピレン(PP)とは

ポリプロピレン(PP)は、プロピレンを重合させて作られる熱可塑性樹脂の一種です。汎用プラスチックに分類され、ポリエチレン(PE)と並ぶ世界的な大量生産樹脂です。その軽さ・耐薬品性・コストの低さから、産業用部品から日用品まで、幅広い分野で利用されています。

ポリプロピレン(PP)の特徴

軽さとコストパフォーマンス

PPは比重約0.9g/cm³と非常に軽く、部品の軽量化に大きく貢献します。また、原料価格が安定しており、コストを抑えた設計が可能です。

優れた機械的特性

PPは剛性・強度のバランスに優れ、繰り返しの折り曲げに強い「ヒンジ特性」を持ちます。蝶番やキャップ部品など、耐疲労性が求められる部位にも最適です。

耐熱性・耐薬品性

耐熱温度はおおよそ100℃前後と比較的高く、さらに酸・アルカリ・有機溶剤に対しても強い耐性を持ちます。そのため、薬品を扱う装置部品や食品関連部品にも多く使用されています。

加工性の良さ

射出成形・押出成形など成形法の自由度が高いほか、切削加工でもバリが出にくく、試作や少量部品の製作に適しています。

また、上記特徴をふまえた上で、PPを使用する上でのメリット・デメリットをまとめています。PPの最大の強みは、コスト効率と物理的特性のバランスです。一方で、耐候性と表面特性に注意する必要があります。

表1. PPのメリット

メリット詳細
コスト競争力汎用プラスチックの中でも安価で、市場供給が安定している。
製品の低価格化と大量生産時のコストダウンに直結します。
軽量比重が約0.9g/cm³と、プラスチック中で最も軽い。
輸送コスト削減、モバイル製品の軽量化、最終製品の取り扱いやすさ向上に貢献します。
ヒンジ特性繰り返し曲げに強い。
部品点数の削減、組み立工数の大幅な短縮、コスト削減を実現します。
耐熱性・耐薬品性耐熱性があり(およそ120〜140℃)、酸、アルカリ、多くの有機溶剤に強い。
電子レンジ対応容器や、薬品に触れる産業部品への適用が可能です。
加工の容易さ射出成形、押出成形、ブロー成形など、あらゆる成形法に適しており、着色も容易。複雑な形状の実現、多様な製品展開がスムーズに行えます。

表2. PPのメリットデメリット

デメリット詳細

耐候性の低さ
紫外線(UV)に弱く、屋外で使用すると劣化し、ひび割れや変色、強度の低下を起こしやすい。屋外用途では、必ずUV安定剤(UV吸収剤やHALSなど)を添加した専用グレードを選定する必要があります。
非粘性による問題表面エネルギーが低いため、塗料、印刷インク、接着剤が非常に密着しにくい。
印刷や接着が必要な場合は、表面改質処理を工程に組み込む必要があります
クリープ特性比較的荷重をかけ続けると変形しやすい(クリープ現象)。剛性(硬さ)もやや低い。
長期間、重さがかかる構造部品には不向きです。必要な場合はガラス繊維を充填して剛性を向上させます。
透明性の限界ランダムコポリマーで高い透明性は可能だが、非晶性樹脂(例:PC、PMMA)のようなガラス質の高い透明度は得られにくい。
高度な光学用途には適しません。多くの場合、半透明または不透明での使用となります。
低温脆性低温(特に10℃以下)になると衝撃に弱くなり、割れやすい性質がある。
寒冷地や冷凍用途では、ブロックコポリマー(PP-B)や専用の耐寒性グレードの選定が必須です。

ポリプロピレン(PP)の主な種類(グレード)

PPは分子構造によって特性が異なり、主に以下の3種類に分類されます。

表3. ポリプロピレン(PP)の主な種類(グレード)

種類特長主な用途
ホモポリマー
(PP-H)
剛性・耐熱性が高く、最も基本的なグレード食品容器、雑貨、家電部品
ランダムコポリマー
(PP-R)
透明性と低温耐衝撃性に優れる医療用部品、透明ボトル、包装フィルム
ブロックコポリマー
(PP-B)
衝撃強度が高く、耐久性重視の部品に最適自動車部品、輸送コンテナ、工具箱

用途に応じた最適なグレード選定が、PP切削加工における品質の安定につながります。

ポリプロピレン(PP)が使用される主な業界・分野

PPは「軽量」「安価」「耐薬品性」という強みを活かし、幅広い分野で採用されています。

物流・包装資材分野

従来の金属やPVCからPPに変更することで、輸送コストの削減を実現。

家電・ガジェット分野

ヒンジ部やカバーなど、柔軟性と剛性を両立した設計が可能。

化学・医療機器分野

薬品耐性を活かし、安全性・清潔性を重視した装置部品に最適。

ポリプロピレン(PP)の切削加工を依頼する前に知っておきたい設計時のポイント

ポイント①:クリープ特性を考慮した荷重設計を行う

PPは、長時間荷重がかかると変形(クリープ)が進行する特性を持ちます。棚板・ケース・フレームなど持続荷重を受ける部品では、短期強度データではなく「クリープ特性グラフ」を参考にし、適切な安全率を設定することが重要です。

ポイント②:寸法変化を考慮した設計を行う

PPは柔らかく、切削熱などの熱に弱く寸法変化しやすいという特性があるため、設計公差は余裕を持つなど、その特性を考慮した設計が必要です。

ポイント③:屋外使用時はグレードを指定する

屋外や紫外線に曝される用途の場合は、耐候性PPを指定し、設計図面にもその旨を明記することが重要です。

ポイント④:塗装・接着は原則として避ける

PPは接着や塗装が非常に難しいため、後工程でこれらの処理が必要な設計は極力避けるべきです。やむを得ない場合は、表面改質処理(プラズマ処理など)の工程を組み込む必要があります。

当社のポリプロピレン(PP)切削加工における強み

PPは、切りくずの巻き付き・絡まり、熱収縮、溶着、反りといった、加工上の課題が多いです。当社では、長年の豊富な経験とノウハウを基に最適な切削条件を選定し、常に高精度かつ安定した品質を提供しています。まず一度ご相談ください。

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当社のポリプロピレンの切削加工事例

事例:半導体製造装置用バルブ

こちらは、半導体製造装置用のバルブです。本製品は、面粗度Ra0.6の指示がありましたが、PPは切削面が荒れやすいといった特性があります。そこで、工具の送り速度や切込み代を工夫することにより、要求精度を実現しました。また、「旋削加工」と「フライス加工」の両工程が必要な形状でしたが、複合機にてワンチャックで加工を行うことでリードタイムの短縮を図っています。

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ポリプロピレン(PP)の切削加工は、F・S・エンジニアリングにお任せください!

PPは、軽量・耐薬品性・コスト面で優れた汎用樹脂ですが、その特性を理解した上で、設計・加工を行う必要があります。当社では、ただ加工を行うだけでなく、より良いPPの切削加工品を製作するための課題解決提案も行っております。

当社では、PPの特性と加工ノウハウを熟知、図面段階からのご相談にも対応いたします。PPの切削加工でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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