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PCの切削加工を依頼する前に知っておいていただきたい設計時のポイント

機械・装置の設計において、「透明性」と「強度」の両立が求められる場面は多々あります。その際、第一候補によく挙がるのがPC(ポリカーボネート)です。 しかし、PCはその優れた物性の裏側で、切削加工時の熱影響や薬品への反応など、設計段階で考慮すべき特有の性質を持っています。

本記事では、PC加工を成功させるための基本特性から、設計時に注意すべき具体的なポイントまで解説します。

PC(ポリカーボネート)の特性

PCは「透明性」と「強靭さ」を併せ持つ稀有な素材ですが、特定の条件下では脆さを見せる側面があります。以下の表に、設計時に考慮すべき要素をまとめました。

項目特徴(メリット)注意点(デメリット)
機械的強度圧倒的な耐衝撃性。アクリルの約30倍、ガラスの約250倍の強度を持ち「割れない」素材として重宝されます。表面硬度は低い。金属やアクリルに比べ擦り傷がつきやすく、摺動部には不向きです。
光学特性高い透明性。可視光透過率は85〜90%と高く、レンズやのぞき窓に最適です。紫外線に弱い。未処理のまま屋外で使用すると、黄変や劣化(脆化)が進みます。
熱的特性高い耐熱性(120〜130℃)。汎用プラスチックの中では熱に強く、高温環境下でも形状を維持します。熱膨張と発熱。加工時の摩擦熱で溶着しやすく、設計寸法に対して熱膨張の影響を考慮する必要があります。
寸法安定性吸水率が低く、精度が出やすい。成形収縮率も小さいため、精密な嵌合部品に適しています。環境応力割れ。寸法は安定しますが、内部応力が残った状態で溶剤に触れると突然ひび割れるリスクがあります。
化学的性質優れた電気絶縁性・非磁性。電子機器の筐体や絶縁部品として安全に使用できます。耐薬品性の低さ。アルコール、ガソリン、強アルカリ等に弱く、洗浄剤の選定に注意が必要です。

PC(ポリカーボネート)の切削加工における設計ポイント

PCの切削加工を依頼する際、以下のポイントを設計に盛り込むことで、加工品質と製品寿命が飛躍的に向上します。

ポイント①:逃げや貫通穴で効率的に熱を逃がす

PCは熱伝導率が低いため、刃先で発生した熱が材料にこもりやすい傾向があります。特に、深い溝や小径の止まり穴は、切粉の排出が悪くなり熱を持ちやすいため、可能であれば逃げを作る、あるいは貫通穴にする等の工夫が有効です。

ポイント②:加工時のクランプ位置を考慮した形状にすることでクランプによる歪みを避ける

PCは剛性がありますが、金属と比較すれば弾性率が低いため、バイス(万力)での締め付けすぎにより、加工後に寸法が戻ってしまう「スプリングバック」が起きることがあります。したがって、平行な「つかみ面」を確保する・治具固定用の「捨て穴」を活用するといった、加工時のクランプ位置を考慮した形状にすることが望ましいです。

ポイント③:表面仕上げによる追加工で透明度を確保する

切削したままの状態では、PC本来の透明度は得られません。 透明度が必要な場合は、バフ研磨や蒸気研磨(ベーパーポリッシュ)等の追加工を指定します。ただし、薬品耐性が変わる点に注意が必要です。

PC(ポリカーボネート)の切削加工事例

事例①:搬送装置用プーリー

こちらは、搬送装置用のプーリーです。搬送装置内の衝撃部に用いられるレバー部品なので、耐衝撃性に優れているという理由からポリカボネート(PC)を採用しています。また、手動でレバーを調整するということも考えられるため、手になじみよくするために、外径部に「ローレット加工」を施しています。

ローレット加工において、材質・外径に応じて、加工条件(送り速度、回転数 等)を調整することが難しいですが、これまでの実績に基づき、加工条件を調整し、高精度な製品に仕上げています。

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事例②:搬送装置用プーリー

こちらは、車載装置用の部品です。ポリカボネート(PC)は切削性は良好ですが、傷がつきやすいです。傷の発生を防ぐためには、加工中の切粉排出に細心の注意を払う必要があります。本事例では、エアの位置や強さを都度調整しながら、切粉の排出を鑑みた加工を行いました。

なお、本製品は「フタ」であるため、固定のためのネジ穴を加工しています。また、相手ネジは金属であるため、補強のためにヘリサート処理を行っています。

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PC(ポリカーボネート)におけるFAQ

設計担当者の方からよくいただく質問をまとめました。

Q. アクリル(PMMA)と比較して、PCの最大の強みは何ですか? 

A. 「圧倒的な耐衝撃性」です。アクリルの約30倍、ガラスの約250倍以上の耐衝撃性があると言われ、「プラスチックの鉄」とも呼ばれます。安全性を最優先する部品にはPCが最適です。

Q. 耐熱温度はどのくらいまで耐えられますか? 

A. 一般的に120°C〜130°C程度の連続使用に耐えられます。これは汎用的な透明樹脂の中ではトップクラスであり、モーター周辺などの熱源に近い部品でも採用可能です。

Q. 屋外で使用した場合の変色は? 

A. 紫外線で黄変しやすい性質があるため、屋外で使用する場合は「耐候グレード」の材料指定、あるいはUVカットコーティングをお勧めします。

Q. 寸法精度はどの程度出せますか? 

A. PCは成形収縮率が小さく、寸法安定性に優れています。切削加工であれば、形状にもよりますが±0.05mm〜±0.1mm程度の公差であれば安定して製作可能です。

Q. 金属からPCへの置き換えで、どの程度の軽量化が可能ですか? 

A. 比重の差により、アルミからの置換で約55%、鋼板からの置換では80%以上の重量削減が見込めます。部品の一体化によるコストダウンも同時に実現可能です。

Q. 洗浄でアルコールを使っても大丈夫ですか? 

A. 推奨しません。 PCはアルコールに対して感受性が高く、マイクロクラック(微細なひび割れ)の原因となります。洗浄の必要がある場合は、中性洗剤を使用するか、事前に耐薬品グレードやハードコートの検討が必要です。

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