技術情報

ユニレートの切削加工を依頼する前に知っておいていただきたい設計時のポイント

「絶縁性が必要だが、寸法精度も妥協できない」

「温度変化や湿度変化で、治具や部品の寸法が狂うのを防ぎたい」

このような課題を抱える設計担当者にとって、ユニレートの切削加工は非常に有効な選択肢です。

ユニレートは、従来ベークライトやPOMでは対応が難しかった高精度・高安定性・絶縁性を両立できる材料として、車載・電子機器・検査治具分野を中心に採用が拡大しています。

本記事では、ユニレートの基本特性から、他素材との比較、切削加工を前提とした設計時の注意点について解説します。

ユニレートの基本特性

ユニレートは、ポリアセタール(POM)樹脂にガラス短繊維を配合し、加熱加圧成形した高機能素材です。一般的なエンジニアリングプラスチックの弱点を補い、極めてバランスの取れた特性を持ちます。主な特長は下記の通りです。

熱膨張率が低く、寸法が安定している:

樹脂材料の中でも群を抜いて熱膨張率が低く、温度変化による寸法変動が非常に小さい素材です。熱膨張係数に関してはアルミ並みとなっており、金属部品との組み合わせでも温度差による位置ズレや歪みが発生しにくく、金属代替としても非常に設計しやすい素材です。

耐熱性に優れ、熱変形が起きにくい:

連続使用温度が高く、加工後の熱変形が起きにくい特性を有します。

絶縁性に優れる:

体積抵抗率・表面抵抗率ともに安定しており、電子部品、電気検査治具、ESD対策部品に適しています。

高い機械的強度を有する:

ガラス短繊維による補強により、 ボルト締結・薄肉加工・微細加工にも十分耐えうる剛性を持ちます。

吸水率が極めて低く、経時変化が少ない:

PETベースであるユニレートの吸水率は0.01%以下と非常に低く、ナイロン系樹脂のような湿度依存の寸法変化がほとんど発生しません。長期間使用する治具や装置部品において、「使っているうちに精度が狂う」リスクを最小限に抑えられます。

上記の特徴から、ユニレートは、車載電子部品・電子制御ユニット・高精度検査治具・高温・高湿環境下で使用される絶縁部品として使用されます。

特に、エンジンルーム近傍や恒温恒湿環境下では、ユニレートの寸法安定性と絶縁性が大きなアドバンテージになります。

ベークライト・POMからユニレートへの代替

ユニレートは、従来ベークライトやPOMでは対応が難しかった高精度・高安定性・絶縁性を両立できる代替素材です。

対ベークライト(フェノール樹脂)

ベークライトは、古くから絶縁材料として実績のある素材ですが、最大の課題は脆さにあります。切削加工時や組立時、あるいは使用中の軽微な衝撃によって「欠け」「割れ」が発生しやすく、薄肉設計や複雑形状への対応には常にリスクが伴います。また、ボルト締結部や角部では応力集中が起きやすく、設計自由度を制限せざるを得ない場面も多く見られます。

ユニレートは、PET樹脂の粘り強さとガラス短繊維による剛性を併せ持つため、

・欠けにくい

・割れにくい

・薄肉でも形状を維持しやすい

という特長があります。

これにより、従来はベークライトでは避けていた複雑形状や精密加工にも対応可能となり、絶縁性を維持したまま、設計の自由度と信頼性を大きく向上させることができます。

対POM(ポリアセタール)

POMは加工性や摺動性に優れた素材であり、多くの機械部品に採用されていますが、精密用途においては加工後の反り・歪み・経時変化が課題となるケースがあります。

特に、板材形状や片肉加工が多い部品では、切削後に内部応力が解放され、時間の経過とともに平面度や位置精度が変化することがあります。

ユニレートは、内部歪みが極めて少なく、熱膨張・吸水による寸法変化も最小限に抑えられるため、

・加工後すぐの精度

・長期間使用後の精度

の両方を安定して維持できます。

そのため、POMでは「使い続けると精度が出なくなる」「調整前提で設計している」といった部品において、大きなメリットが得られます。

ユニレート切削加工品を設計する上でのポイント

ユニレートの切削加工を依頼する際、以下のポイントを設計に盛り込むことで、加工品質と製品寿命の向上につながります。

ポイント①:反りを最小化するために、厚みと形状のバランスに注意する

ユニレートは、樹脂材料の中でも反りや歪みが非常に少ない素材ですが、それでも設計段階での配慮によって、精度の安定性はさらに高めることができます。

特に注意したいのが、片側だけを大きく削り取るような形状です。どれほど安定した素材であっても、切削量に大きな偏りがあると、わずかな応力差が平面度や直角度に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、設計時には

・表裏で切削量を均等にする

・極端な片肉構造を避ける

・不要な肉抜きを減らす

といった形状設計が有効です。

このような配慮を行うことで、板厚精度や平坦度が安定し、加工後の修正や再加工を前提としない設計が可能になります。

ポイント②:ネジ立て時は十分な肉厚を確保し強度を出す

ユニレートは高い機械的強度を有していますが、ガラス短繊維を含む積層構造であるため、ネジ構造での強度が重要なポイントです。特に、板厚方向(厚み方向)へのネジ立てでは、十分な肉厚を確保しないと、繰り返し締結時にネジ山が摩耗したり、保持力が低下する可能性があります。

設計段階では、

・ネジ径に対して余裕のある肉厚を確保する

・繰り返し着脱が想定される箇所にはヘリサートやインサートを検討する

・締結トルクを過度に上げない設計とする

といった対策が有効です。

これにより、治具や装置部品として長期間使用しても、締結部の信頼性を維持できる構造を実現できます。

ユニレートの切削加工における当社の特徴

特徴①:切れ味を重視した刃先の選定による高精度加工

ガラス繊維を含むユニレートでは、工具の切れ味が品質を大きく左右します。当社では、

荒加工用・仕上げ加工用で工具を明確に使い分け、加工負荷を抑えた最適な切削パスを設計しています。

特徴②:豊富な加工実績とノウハウに基づく条件設定

PETベースのユニレートは、熱をかけすぎると精度が低下したり、無理な負荷はクラックの原因となる素材です。

したがって、切削音・切り粉状態を確認しながら、回転数と送り速度を最適化することで、安定した高精度加工を実現しています。

当社のユニレートの加工実績をご紹介

事例①:車載機器用ブロック

車載電子機器用ブロックの切削加工事例です。導電性樹脂ユニレートCVを採用し、安定したESD対策と車載環境に求められる高い寸法精度を両立。独自のCAM演算による加工パス最適化で、ピッチ公差±0.02mmの厳格な精度と滑らかな斜面を実現しました。金属代替による軽量化と低コスト化に貢献する当社の精密技術をご紹介します。

加工事例の詳細はこちら

ユニレートにおけるFAQ

設計担当者の方からよくいただく質問をまとめました。

Q1. POMやMCナイロンと比較して、加工コストはどの程度変わりますか?

A. ユニレートは材料単価だけを見ると、POMやMCナイロンと比較して高価な部類に入ります。しかし、切削加工後の反りや歪みが極めて少なく、経時変化もほとんど発生しないため、修正加工・再加工・再調整といった“見えないコスト”を大幅に削減できる点が特長です。

特に、高い平面度や位置精度が求められる部品では、歩留まりの向上や不良率低減につながり、長期的な製品寿命や品質安定性まで含めて評価すると、トータルコストではむしろ有利になるケースが多く見られます。

Q2. ガラス繊維が含まれているとのことですが、摺動部(滑りが必要な箇所)に使えますか? 

A. ユニレートはガラス短繊維を含有しているため、純粋なPOMやMCナイロンと比べると、相手材を摩耗させる可能性があります。そのため、連続的な摺動や高荷重がかかる用途では注意が必要です。一方で、PET樹脂由来の自己潤滑性も一定程度保持しており、軽荷重・低速・限定的な摺動用途であれば使用実績もあります。

金属との接触摺動や寿命が重要な部位については、事前の実機評価や相手材との組み合わせ検証を行ったうえでの採用を推奨します。

Q3. 吸水率の低さについて、ナイロンやPOMと比較した優位性は?

A. ユニレートはPETベース素材であり、吸水率は0.01%以下と極めて低い水準です。これは、ナイロン系素材が環境によって数%単位で寸法変化を起こすのに対し、湿度や保管環境の影響をほぼ受けないレベルであることを意味します。

POMと比較しても吸水率は一桁以上低く、高湿度環境や長期使用においても寸法安定性を維持できます。そのため、環境条件に左右されない精度が求められる治具・検査装置・精密部品の設計において、大きなアドバンテージがあります。本的には可能ですが、長期間の直射日光には注意が必要です。 耐候性は比較的良好ですが、長期間の紫外線曝露により黄変や脆化が進む場合があります。紫外線対策が必須の場合は、「耐候グレード」のPET材を選定するか、塗装やコーティングを検討してください。

Q4. ベークライト(フェノール樹脂)と比較した際の強度は?

A. ベークライトは絶縁性に優れる一方で、衝撃に弱く「欠け」や「割れ」が発生しやすいという課題があります。特に薄肉形状やボルト締結部では、応力集中による破損リスクが設計上の制約となりがちです。

ユニレートは、PET樹脂の粘り強さとガラス短繊維による剛性を併せ持っており、衝撃耐性・機械的強度ともにベークライトを大きく上回ります。そのため、繰り返しの締結や高精度が求められる検査治具・絶縁部品において、信頼性と寿命の両立が可能です。

Q5. 設計時に注意すべき「PETゆえの弱点」はありますか?

A. ユニレートは寸法安定性・強度・絶縁性のバランスに優れた素材ですが、PET樹脂由来の特性として、強アルカリ環境や高温の熱水に対しては加水分解のリスクがあります。そのため、薬品洗浄工程がある装置や、スチーム・高温多湿環境に常時さらされる用途では注意が必要です。

一方で、一般的な油圧機器、電子部品、検査装置などの環境においては問題なく、むしろ長期安定性の高い素材として非常に信頼性の高い選択肢といえます。

ユニレートの切削加工は、F・S・エンジニアリングにお任せください!

ユニレートは、寸法安定性・絶縁性・機械強度を両立できる、設計者にとって非常に扱いやすい素材です。

「精度が出ない」「経時変化が不安」「ベークライトだと割れる」

その悩み、ユニレート切削加工で解決できる可能性があります。

材料選定や加工可否でお悩みの際は、ぜひ一度ご相談ください。

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