複合旋盤を活用した工程集約による樹脂切削のコストダウン
複合旋盤加工機は、旋削加工とミーリング加工の機能を1台に集約した工作機械です。従来複数工程で行っていた加工を1台で完結できるため、金属加工はもちろんのこと、樹脂切削加工においても、生産性向上や品質の安定化、そしてコストダウンを図ることができます。
本記事では、コストダウンを中心に複合旋盤加工機を活用した工程集約のメリットについて解説し、またコストパフォーマンスを最大化できる樹脂切削品の部品形状についてお伝えいたします。
複合旋盤によるメリット
複合旋盤を使用することで、コストダウンをはじめ、リードタイム短縮・加工精度の向上と、品質の安定化を実現することが可能です。
①工程集約によるリードタイム短縮とコストダウン
複数工程に分かれていた従来の加工方法と比較し、複合旋盤加工機ではワンチャッキングで旋盤加工とマシニング加工を行うことができます。これにより以下の効果があります。
■ 工程削減
旋削加工とミーリング加工を1台で完結でき、部品ごとのワーク付け替えが不要です。
■ 段取り回数削減
工程間の運搬や再取り付けが不要となり、段取り時間を大幅に短縮できます。
■ 納期短縮
工程削減・段取り時間の短縮により、部品の製造リードタイムを短縮し、結果として生産性が向上し、コスト削減にも貢献します。
②加工精度の向上と品質の安定化
複合旋盤加工機では、ワークの段取り回数が減るため、再クランプ時の芯ズレや位置決め誤差のリスクを大幅に抑制できます。
■ 芯ズレ防止
ワンチャッキングによって、切削面とミーリング面の相対精度を確保。
■ 品質均一化
高精度な加工が可能で、特に高い幾何公差やミクロン単位の精度を必要とする精密部品でも、個体差の少ない安定した製品供給が可能です。
どんな形状の樹脂切削品が複合旋盤で加工されるのか
複合旋盤加工機は、単純な円筒形状だけでなく、下記のような形状で特にその効果を発揮します。
①軸物・円筒形状にフライス加工が必要な部品
■ カムやクランクシャフト
旋削に加え、キー溝加工や穴あけ、割り出し加工など複雑形状が必要になるため、複合旋盤で加工を行います。
■ フランジ部品
外径・内径加工に加え、タップ穴や平面切削も同時加工できる複合旋盤が使用されます。

図1. 形状例:ノズル
②多数の穴加工を持つ部品
■ バルブや継手
円筒やテーパー形状の旋削面に、任意角度での穴あけやタップ加工を行う際に複合旋盤が有効です。
■ 流体制御部品
複合旋盤では、内径旋削と多方向ミーリングを組み合わせた複雑な流路の加工も対応可能です。

図2. 形状例:ローラー
③高度な同軸度・位置精度が求められる精密部品
■ 医療機器・半導体製造装置・航空宇宙関連部品
複合旋盤を用いることで、真円度や穴位置、ねじ部の同軸度など高精度要求に対応でき、ワンチャッキングで位置精度を安定化することができます。

図3. 形状例:チャンバー部品
複合旋盤加工機は、試作品や精密部品の製造において、従来の加工方法では達成が難しかった効率と品質を実現します。樹脂切削加工の現場で工程集約を活用することで、段取り削減・精度向上・納期短縮が可能となり、結果として樹脂切削のコストダウンに直結します。
当社の複合旋盤をご紹介
当社では、ヤマザキマザック製の複合機「QUICK TURN NEXUS 200-2 MY」で樹脂切削加工を行っております。
本機は、12本の工具を装備できるターレットを有し、フライスと旋削の両方を段取り変えを行うことなく効率的に加工ができます。一般NC旋盤の可動軸X、ZにY軸が追加されたことで幅広いニーズに対応可能となり、複雑な形状に対しても切削加工が可能です。
表1. ヤマザキマザック QUICK TURN NEXUS 200-2 MY の仕様
| 項目 | 仕様 |
| チャックサイズ | 8in |
| 工具収納本数 | 12本 |
| 対応ワーク径 | 最大200mm |
| 対応ワーク長 | 最長400mm |
| 主軸回転速度 | 第1主軸:3,500min、刃物台:4,500min |
その他設備に関しては、下記よりご覧ください。
当社の複合旋盤でのコストダウン事例
事例①:自動車用ローラー

こちらは、PTFEのローラー部品です。複合旋盤で加工することで、工程を集約し、リードタイムの短縮・コストダウンを実現しています。外形のスリット部分の形状に合わせて、特注エンドミルを製作しています。
事例②:治具部品(コレット)

こちらは、ジュラコン® の社内治具です。本事例も複合旋盤で加工することで、工程を集約し、リードタイムの短縮・コストダウンを実現しています。
事例③:自動車用ケース

こちらは、PTFEのケースです。複合旋盤で加工することで、旋盤・マシニング加工工程を集約し、リードタイムの短縮・コストダウンを実現しています。
樹脂切削加工は、F・S・エンジニアリングにお任せください!
本記事では、「複合旋盤を活用した工程集約による樹脂切削のコストダウン」をお伝えいたしました。当社では、材料特性や適切な加工条件を考慮した切削加工を行っており、試作から量産まで高品質な樹脂製品の製作が可能です。
またご希望の製品を製作することはもちろんのこと、より品質をあげる、コストダウンを実現する材質提案・VE提案を行っております。
樹脂・プラスチックの切削加工にお困りの方は是非当社までお問い合わせください。