MCナイロン™とPOM(ジュラコン®)の違いと選び方|摺動・耐摩耗部品の材質選定
MCナイロン™とPOM(ジュラコン®)は、どちらも摺動部品や耐摩耗部品に使われるエンジニアリングプラスチックです。ガイドやローラーなど同じ部品で候補に挙がる一方、得意とする使用条件は異なります。
荷重・衝撃や摩耗への対応を重視する場合はMCナイロン™、吸水による寸法変化を抑えたい場合はPOMが候補になります。ただし、耐摩耗性は相手材や荷重・速度などの条件によって変わります。
本記事では、両者の違いを摺動・耐摩耗部品の材質選定という視点で比較します。切削加工時の注意点と、当社の加工事例もあわせて紹介します。
MCナイロン™とPOM(ジュラコン®)の違い
MCナイロン™は、モノマーキャスティング製法でつくるポリアミド樹脂です。POMはポリアセタール樹脂で、代表的な製品名にジュラコン®があります。どちらも無給油の摺動部品に使われますが、使用条件に合うグレードの選定が必要です。
| 項目 | MCナイロン™ | POM(ジュラコン®) |
|---|---|---|
| 耐摩耗性 | 耐摩耗部品に広く使われる | 良好。相手材・使用条件で比較する |
| 耐衝撃性・弾性 | 適度な弾性があり、衝撃吸収や静音性を重視する用途の候補 | 剛性と寸法安定性を重視する用途の候補 |
| 吸水・寸法安定性 | 吸水により寸法が変わる | MCナイロンより吸水が少なく、寸法変化が小さい |
| 耐熱性 | 代表的な連続使用温度の目安は約120℃ | 一般にMCナイロンより低い。グレードごとに確認 |
| 切削加工性 | 切削熱・残留応力・吸水による変形に注意 | 切削性は良好。加工熱や薄肉部のたわみに注意 |
| 対応グレードの例 | 導電、帯電防止、摺動、耐摩耗 | 帯電防止、摺動 |
※一般的な比較の目安です。物性や使用温度、摩耗量はグレード・荷重・相手材・湿度などにより変わります。
摺動・耐摩耗部品で比べる3つの選定ポイント
材質はカタログの物性値だけでなく、部品が受ける条件から決めます。特に重要なのは次の3つです。
① 荷重・衝撃を受ける条件ではMCナイロンを検討する
MCナイロン™は適度な弾性があり、衝撃を吸収しやすい材料です。金属ワークの受けや、着脱を繰り返すガイドなどで採用されます。ワークの傷や部品の摩耗は接触形状・異物・面粗さにも左右されるため、実際の条件で確認します。
② 寸法精度と湿度の影響を重視するならPOMを検討する
MCナイロン™は吸水しやすく、湿度によって寸法が変わります。嵌め合いやすき間の管理が厳しい部品では、吸水による膨張を見込んだ設計が必要です。
POMはMCナイロンより吸水が少なく、湿度による寸法変化を抑えやすい材料です。湿度が変わる現場や、精密な機構の部品で候補になります。
③ 相手材と潤滑の条件は実際の使い方で判断する
どちらも無給油の摺動部品に使えますが、摩耗量は材料単体の物性値だけでは決まりません。接触する相手材、荷重、摺動速度、温度、表面状態、潤滑の有無を確認します。長く使う部品では、実際の条件で評価して選定してください。
MCナイロンとPOMの部品別の選び方
迷いやすい部品ごとに、材質を選ぶときの目安をまとめました。
| 部品 | MCナイロン™を検討する条件 | POMを検討する条件 |
|---|---|---|
| ガイド・ワーク受け | 衝撃吸収や繰り返しの着脱に対する摩耗対策を重視 | 複雑形状で穴位置・ピッチの精度と寸法安定性を重視 |
| ローラー | 衝撃吸収や静音性を重視。屋外では耐候性も確認 | キー溝など精密形状と吸水の少なさを重視 |
| プレート・ブロック | 荷重を受ける部品の強度・耐摩耗性を重視 | 吸着面などの平面精度と寸法安定性を重視 |
| 食品機械の部品 | MC900NCなど、食品接触条件に合うグレードを検討 | 識別用の着色品なども含め、食品接触条件に合うグレードを検討 |
食品機械では色や樹脂名だけで適否を判断せず、接触する食品、温度、時間、洗浄条件と、材料メーカーの適合情報を確認してください。
ガイド形状の加工事例を見る / ローラー・プーリー形状の加工事例を見る
切削加工での違いと設計時の注意点
MCナイロン™の切削加工
MCナイロン™は切削熱による一時的な膨張や、残留応力による変形に注意が必要です。切りくずの排出や工具への溶着にも配慮します。
設計では、吸水による膨張を見込んだクリアランスや余裕寸法を設定します。±0.05mm以下の精度を求める場合は、寸法の測定条件や使用環境を含めて事前にご相談ください。
MCナイロン加工の設計ポイントを見る / MCナイロンの対応グレード・事例を見る
POM(ジュラコン®)の切削加工
POMは切削性のよい材料ですが、切削熱による膨張や冷却後の収縮が寸法誤差につながります。薄い壁や細いリブでは、切削抵抗によるたわみやビビリにも注意します。
必要以上に厳しい公差は工程を複雑にし、加工時間やコストを増やす場合があります。機能に必要な公差を明確にすると、品質とコストを両立しやすくなります。
POM切削加工の設計ポイントを見る / ジュラコンの対応グレード・事例を見る
当社の加工事例
事例①:ワーク支持用ガイド(MCナイロン™)

産業機器で精密な金属ワークを受け、位置決めするV字受け構造の部品です。ワークを傷つけにくく、着脱を繰り返しても摩耗しにくい点から、MCナイロン™を採用しました。
標準的な加工機で、加工プログラムと段取りを工夫して指定の角度を実現しています。V字受け部の角度と位置精度は、三次元測定機で測定・検証しました。
事例②:受けローラー(MCナイロン™ MC801)

屋外で使う光学観測装置の駆動機構に組み込む、φ130×L45mmの受けローラーです。紫外線を遮断する耐候グレードのMC801を採用しました。
中央の穴にはベアリングが入るため、+0.02mmの嵌合精度が求められました。切削条件と加工プロセスを管理し、熱膨張や残留応力の影響を抑えています。
MCナイロンとPOMに関するよくある質問
Q. 摺動部品に向いているのはどちらですか?
どちらも摺動部品に使われます。荷重・衝撃への対応を重視する場合はMCナイロン、吸水による寸法変化を抑えたい場合はPOMが候補です。実際の摺動性能は、相手材、荷重、速度、温度、潤滑条件で評価します。
Q. MCナイロンからPOMへ変更できますか?
吸水による寸法変化が課題であれば、POMへの変更が有効な場合があります。ただし、衝撃や高温条件ではMCナイロンが適することもあります。必要な特性を比較して判断します。
さらに寸法安定性が必要な場合は、PEEKなどへの変更も候補です。当社ではMCナイロン製のプレートをPEEKに変更し、厚み公差±0.02mmを安定させた事例があります。
Q. 食品機械にはどちらが向いていますか?
どちらも食品機械で使われますが、食品に接触する場合は、ポジティブリストへの対応や使用条件をグレードごとに確認します。MC900NCなどの無着色品や、識別に役立つ着色POMも候補です。MC901・MC900NCはメーカーが食品用途で使用前の処理条件を示しているため、最新資料で確認してください。
MCナイロン・POMの切削加工は、F・S・エンジニアリングにご相談ください
樹脂・プラスチック切削加工ラボでは、材料特性や加工後の寸法変化を考慮して加工します。材質提案から試作・小ロット量産まで、1個の試作から数千個単位の量産までご相談いただけます。
材質で迷う場合は、用途、相手材、荷重、速度、温度・湿度、要求公差、必要数量をお知らせください。使用条件に合わせて検討します。